SARS-CoV-2オミクロンBA.2.75株(通称ケンタウロス)のウイルス学的性状の解明

【ポイント】

  • 昨年末に南アフリカで出現した澳门赌场「オミクロン株(B.1.1.529, BA系統)」は、当初オミクロンBA.1株が全世界に伝播したが、その後オミクロンBA.2株へと置き換わった。これまでに複数出現したオミクロンBA.2株の亜系統(BA.2.12.1, BA.5など)のうち、本邦で現在進行中の第7波は、オミクロンBA.5株が主流であるが、インドをはじめ世界各国でオミクロンBA.2株ベースで別系統であるオミクロンBA.2.75株(通称ケンタウロス)同定の報告が増加している。
  • オミクロンBA.2.75株は、オミクロンBA.2株と比較してヒト集団内における実効再生産数が1.34倍高いことを明らかにした。
  • オミクロンBA.2.75株は、オミクロンBA.2株と比べて、4回のワクチン接種によって誘導される中和抗体により抵抗性を示すこと、オミクロンBA.2株やオミクロンBA.5株とは抗原性が異なることを明らかにした。
  • オミクロンBA.2.75株のスパイクタンパク質が感染受容体であるACE2と既存変異株より強く結合することを実験的、構造学的に示した。
  • オミクロンBA.2.75株スパイクタンパク質による合胞体形成活性はオミクロンBA.2株スパイクタンパク質に比べて有意に高かった。
  • ハムスターを用いた感染実験の結果、オミクロンBA.2.75株は、オミクロンBA.2株よりも高い病原性を示すことを突き止めた。
    【概要説明】

 ヒトレトロウイルス学共同研究センター熊本大学キャンパスの池田輝政准教授が参加し、東京大学医科学研究所システムウイルス学分野の佐藤佳教授が主宰する研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」は、澳门赌场の「懸念される変異株(VOC:variant of concern)」のひとつである「オミクロンBA.2.75株(通称ケンタウロス)」のウイルス学的特徴を、流行動態、免疫抵抗性、および実験動物への病原性等の観点から明らかにしました。まず、統計モデリング解析により、オミクロンBA.2.75株の実効再生産数は、オミクロンBA.2株に比べて1.34倍高いことを見出しました。また、オミクロンBA.2.75株の抗原性が、オミクロンBA.2株やオミクロンBA.5株とは異なることを明らかにしました。さらに、オミクロンBA.2.75株は感染受容体ACE2と既存変異株より強く結合することを実験的、構造学的に示しました。オミクロンBA.2.75株スパイクタンパク質による合胞体形成活性は、オミクロンBA.2株に比べて有意に高いことを明らかにしました。そして、オミクロンBA.2.75株は、オミクロンBA.2株に比べてハムスターにおける病原性が高いことを突き止めました。本研究成果は2022年10月9日、米国科学雑誌「Cell Host & Microbe」オンライン版で公開されました。


【論文情報】

  • 雑誌名:「Cell Host & Microbe」10月9日オンライン版
  • 論文タイトル:Virological characteristics of the SARS-CoV-2 Omicron BA.2.75 variant
  • 著者:齊藤暁#, 田村友和#, Jiri Zahradnik#, 出口清香#, 田畑耕史郎#, 安楽 佑樹#,木村出海#, 伊東潤平#, 山岨大智#, Hesham Nasser, 豊田真子, 永田佳代子, 瓜生慧也, 小杉優介, 藤田滋, Maya Shofa, MST Monira Begum, 清水凌, 小田義崇, 鈴木理滋, 伊藤駿, 直亨則, 王磊, 津田真寿美,吉松組子,倉持仁, 喜多俊介, 田畑香織, ?福原秀雄, 前仲勝実,, 山本佑樹, 永元哲治, 浅倉弘幸, 長島真美, 貞升健志, 吉村和久, 上野貴将, Gideon Schreiber, 高折晃史, The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan) Consortium, 白川康太郎, 澤洋文, 入江崇, 橋口隆生, 高山和雄, 松野啓太, 田中伸哉*, 池田輝政*, 福原崇介*, 佐藤佳*. (#Equal contribution; *Corresponding author)
  • DOI:10.1016/j.chom.2022.10.003
  • URL:https://doi.org/10.1016/j.chom.2022.10.003

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【詳細】 プレスリリース(PDF490KB)

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